大判例

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大阪高等裁判所 昭和26年(ネ)695号 判決

控訴費用中控訴人と被控訴人との間に生じた分は控訴人の負担とし、補助参加人等と被控訴人との間に生じた分は、補助参加人等の連帯負担とする。

二、事  実

控訴代理人は原判決を取り消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、第二審とも被控訴人の負担とする旨の判決を求め、被控訴代理人は本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする旨の判決を求めた。

当事者双方の事実上の陳述は、控訴代理人において奥野梅次郎は昭和一九年九月三〇日死亡し、当時その弟の奥野与平及び被控訴人から兵庫県農業技術員として榎列村農業会に勤務して同村の農業経営の指導にあたつていた沼田正一に対して本件農地の耕作についてその一切を委任し、同人は榎列村農業会と相談の上補助参加人等に右農地の耕作方を依頼したものである。被控訴人は昭和二一年一一月中亡奥野梅次郎の家督相続人に選定せられ本件農地の所有権及び自作地としての耕作権を取得したというが、被控訴人が承継取得したのは本件農地の所有権だけであつて、被控訴人が昭和二四年一一月二四日以降本件農地を耕作するのは仮処分命令の執行による執行吏の職務の範囲内のものであつて、所有権にもとずく本来のものでないから本件農地は被控訴人の自作地とはいわれないと述べ、被控訴代理人において奥野与平及び被控訴人から本件農地の耕作について沼田正一に対し控訴人主張の如き委任をしたことがない。また仮処分命令は被控訴人が本件農地の所有者としてこれを耕作し得る権限あることを認めたものであつて、被控訴人はこれを自作地として耕作するものであると述べた外原判決事実摘示のとおりであるから、ここにこれを引用する。(証拠省略)

三、理  由

本件農地はもと被控訴人の兄にあたる奥野梅次郎の自作地であつたが、同人が昭和一九年九月三〇日法定または指定の家督相続人なくして死亡したので、被控訴人は昭和二一年一一月中その家督相続人に選定せられ、右梅次郎が自作地として耕作していた本件農地の所有権を承継取得したこと、補助参加人等が右梅次郎の死亡後の昭和二〇年五月頃或は昭和二一年五月頃から本件農地を耕作してきたこと、被控訴人が洲本簡易裁判所から所有権にもとずく明渡請求訴訟を本案とする仮処分命令を得て昭和二四年一一月一二日これを執行した結果、執行吏は補助参加人等の本件農地に対する占有を解いて自己の占有に移した上被控訴人をして爾来これを耕作せしめてきたこと及び兵庫県三原郡市村農地委員会は被控訴人が本件農地を権原にもとずき耕作し得るに拘らず、補助参加人等の耕作に委ね自ら耕作の目的に供していないことを理由として、昭和二四年一二月二四日自作農創設特別措置法(以下自創法と称する)第三条第五項第六号の規定により買収する旨の買収計画を定め、控訴人は右買収計画にもとずいて昭和二五年三月九日附兵庫よ第六号の買収令書を発し、同令書が同月一七日被控訴人に到達したことは当事者間に争がない。しかして成立に争のない甲第三号証、同じく乙第一一、第一四号証に原審における証人沼田正一、竹口秀雄の各証言、当審における証人野口貞七、竹口秀雄、高見久平、沼田正一、橋本良夫の各証言、証人富永甚城、前川武夫、奥野信夫、秦野長平、平野林平の各証言の一部及び被控訴本人の供述を綜合すると、奥野梅次郎の弟にあたる奥野与平は梅次郎死亡当時自己が梅次郎の相続人であると僣称して、昭和一九年一一、二月から梅次郎の居宅に入り込み、昭和二〇年五月頃と昭和二一年五月頃の二回に亘り何等法律上の権限がないのに、農業技術員の沼田正一及び榎列村農業会の斡旋によつて本件農地を補助参加人等に賃貸し、その賃料を取得して自己の生計を立てていたこと、被控訴人は昭和二一年一一月中梅次郎の家督相続人に選定せられ同人が自作地として耕作していた本件農地の所有権を承継取得したので、右沼田正一を介して補助参加人等に本件農地の返還を求めたが同人等がこれに応じなかつたので、補助参加人等を相手方として右農地の返還を求める訴を提起する一方、右訴を本案として同人等を相手方として冒頭認定の如き仮処分命令を得て、昭和二四年一一月一二日以降執行吏の許可の下に本件農地を耕作するに至つたこと及び被控訴人は昭和二〇年五、六月既に榎列村に転入しており、昭和二四年一一月一二日以降は内縁の夫である竹口秀雄及びその子供等の手を借りて現実に本件農地を耕作して現在に至つていることを認めるに十分であつて、証人富永甚城、前川武夫、奥野信夫、秦野長平、平野林平の各証言中右認定と牴触する部分は措信しがたく、他に右認定をくつがえすに足る証拠がない。右認定事実によると、奥野与平は何等法律上の権原なくして自己のために本件農地を管理していたもので、右は不法行為であつて事務管理ではなく、右与平から本件農地を賃借した補助参加人等は本件農地の所有権を承継取得した被控訴人に対し右賃借権を以て対抗することができず、他に何等正当の権原あることの主張立証のない本件においては、補助参加人等は不法に本件農地を耕作するものであり、被控訴人が右農地の所有権を承継取得しながら自ら耕作することのできなかつたのは、補助参加人等が不法にこれを占拠して明渡の請求に応じなかつたためで、任意に耕作できるのに耕作しなかつたものでないから、本件農地は自創法第三条第五項第六号にいわゆる所有権その他の権原にもとずきこれを耕作できる者が現に耕作の目的に供していないものとはいわれない。殊に、本件買収計画の定められた昭和二四年一二月二四日当時被控訴人は仮処分命令執行の結果とはいえ、現に本件農地を耕作していたものであるから、自創法第三条第五項第六号所定の農地に該当しないものと認むるを相当とすべきが故に、本件農地を右規定によつて買収する旨定めた本件買収計画は違法たるを免れない。

控訴人は(一)右買収計画に対しては法定の期間内に異議の申立、訴願がなかつたから同計画は有効に確定した、(二)控訴人は買収計画に対し形式的審査権しかなく、買収計画を違法と認めてもこれを自ら取り消す権限を有しない、(三)自創法は買収計画はこれを公告すべきものとし、これに違法ありと認めるときは、当該農地の所有者に異議の申立、訴願を許しているが、買収計画に存する違法を理由に知事の買収処分の取消を許すとすれば、買収計画を公告すべきものとしこれに異議の申立、訴願、出訴を許す必要はない等の理由を挙げ、買収計画に存する違法を理由に本件買収処分の取消を求めることは許されないと主張するが、かかる主張の認められないことは最高裁判所昭和二五年九月一五日言渡昭和二四年(オ)第四二号事件の判決において示されたとおりであるから右主張は採用することができない。

そうだとすれば、控訴人が本件農地に対し違法な買収計画にもとずいてなした本件買収処分は爾余の争点に対する判断を俟つまでもなく違法として取り消さるべきものであつて、これが取消を求める被控訴人の請求を認容した原判決は相当であつて、本件控訴はその理由がないので、民訴第三八四条、第九五条、第八九条、第九四条、第九三条第一項但書前段を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 吉村正道 大田外一 金田宇佐夫)

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